医学への貢献 | 先端医療も支える献体の意義

先端外科治療の
安全な導入と
普及のために

不老会副理事長(医学博士)杉浦 康夫

最初の解剖学

学生が、自分の知識を
体系化し、
人体の理解を
深めることが第一の目的

解剖学は、人体を詳細に解剖する実習を通じて、教科書で得た知識を一段と高め、体の構造を系統的に深く理解することで、広範な医学の基礎を築く学問です。

昭和40年代以前、解剖には主に行路死亡者や病院で亡くなった方々の遺体が用いられ、遺族や行政の許可のもとで行われていました。その後昭和30年代半ばからは、大学の医学部において、篤志献体団体(例えば不老会や白菊会など)が設立され、これらの団体から提供された篤志献体を遺体解剖実習に使用するようになりました。
学生は、遺体解剖実習を通じて人の命の尊さと献体への崇高な意識を学び、また無償の献体に対する感謝の気持ちを深く実感します。

医学知識がまだない学生にとって、遺体解剖実習は人体の構造と機能を学ぶ最初のステップです。そのため、詳細な解剖を行い、その過程で知識を体系的に整理し、人体の理解を深めることが、この実習の目的となります。
さらに進んで臨床教育が始まると、具体的なレントゲン写真やCT画像で見られる体の部位で人体構造を理解する臨床解剖が始まります。しかしこの段階は、あくまで医学教育の一環であって、ここでの学びが実際の医療実践に結びつく知識へと発展していくのです。

コンピューター補助手術と献体

手術技能の向上には、
献体を用いた
手技トレーニングが
不可欠

1985年(昭和60年)頃から内視鏡手術(腹腔鏡手術)が導入されました。
従来の開腹手術は、手術部位を直接見ながら手と器具を使用し、比較的大きな切開を必要とし、多量の出血も伴うため、患者にとって大きな負担がありました。
これに対し、内視鏡手術では1cm程度の小さな切開を数か所に開け、モニター上の映像を見ながら手術を行うことで、手術の低侵襲化を実現しました。一方、器具の扱いなど熟練した技術が求められるようになり、実際の人体を用いた手技のトレーニングが再び重要視されるようになりました。

2000年(平成12年)頃、複数の内視鏡を使用し、遠隔操作で手術を行うロボット支援下手術が始まり、日本では「ダヴィンチ手術」と俗称され、2012年(平成24年)に保険適用されることで広く普及しました。この技術は内臓手術だけでなく、整形外科や脳外科などでも応用され、より精密な手術が可能になりました。
しかし、ロボットが手の感触を持たないため、モニター上の映像だけでは臓器や器官を正確に識別するのが難しく、見落とされがちな出血などを防ぐためには、献体を用いた人材育成のトレーニングが引き続き必要です。

遺体固定法の変化と手術手技研修

献体を活用した
手術技術研修の
全国普及に向けて

医師・歯科医師免許を取得し、病院や教室に配属された後、実際の手術を行う際に必要な手術技術を習得するための訓練が手術技術研修です。従来、遺体の保存にはホルマリンやアルコールが用いられてきましたが、これらの方法では遺体が硬直し可動性に乏しくなるため、実際の手術環境を再現する訓練には不向きで、特に細かな部位や複雑な手術技術の習得には限界がありました。
1992年(平成4年)遺体をより自然な状態で保存し、関節や筋肉の可動性を保つことができる「シール法」という新しい固定法が開発されました。この革新的な方法は、手術技術の訓練を画期的に改善する可能性を秘めています。
さらに、このような解剖固定法の改良に加え、コンピューター支援手術技術の導入とともに、外科分野では「サージカルトレーニング」と呼ばれる新たな外科研修が求められるようになりました。

近年における手術治療の進歩は目覚ましく、先進的な医療技術を要する手術手技には高度な技術習得が必須です。しかし、そのような手術手技は臨床での経験機会が少なく、医療事故リスクから現場が学ぶことが適切でない場合もあります。
高度な医療を安全に提供するためには、献体を用いた手術手技修練のための解剖実習が不可欠です。献体は先端外科治療の安全な導入と普及にも貢献しています。

当会の活動にご賛同いただき、今後の発展的な活動にご支援いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。

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